プレッシャーで成長するのか ~ゆとりの法則~
最近は、トム・デマルコの本を続けて読んでいるが、今度は「ゆとりの法則」だ。要するに、プレッシャーをかけすぎても生産性は上がらず、組織の柔軟性は低下し、変化に対応できませんよ、ということが書かれている。ゆとりだけではダメですが、ゆとりをうまく利用して、チームの活性化につなげるかのマネジメントが重要かと思う。
- 作者: トム・デマルコ,伊豆原弓
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2001/11/26
- メディア: 単行本
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「緊張感やプレッシャーが人を成長させる」
よく耳にする言葉で、そのことは否定しません。いい環境で、その人にとって適切で適度なプレッシャーであれば成長を促進されることは大いにあると思います。しかしながら、そのプレッシャーを本人がどう感じるかで結果は変わってくると思います。そのプレッシャーが不必要に、管理者の思いだけでかけられたものであれば、ポジティブな思考や行動には、必ずしも結びつかないのではないでしょうか。
知的労働者は必ずしも給料や地位を求めるのでなく、それよりもやりがいや成長を糧にする人も多い。モチベーションを上げながら、生産性を高め、変化に順応できる組織にするためには、「ゆとり」が大事ですよ、と主張しているのが本書である。
結局は中間管理職のマネジメント能力について書かれている。「働き過ぎている管理者は、ほぼまちがいなく、やるべきでない仕事をやっている。」とあるが、全くその通り。管理者が全ての業務をこなし、手順をくまなく管理しようとしても無理であるし、それは結局、組織としての非効率性を産んでいるだけだと思う。権限移譲のことも書かれていたが、多くの管理者は権限移譲には好意的だが、自分の管理権は失わないと真剣に思っていると書かれている。これでは、結局「任せるけど、僕の思った通りにしてね」って言っているのと同じだろうと思う。権限移譲は「君にこの範囲の判断は任せる。たとえ私と違う判断をしても、それも含めて支持するし、何かあったら私が責任を持つ」ということだと思う。何もかも思った通りにコントロールしようとしても無理である。大事なのは、「この人に任せられるか、任せられないか」の判断だけであると思う。
企業が労働者の生産能力をめいいっぱい引き出そうとすれば、労働者は「使われた」と感じるようになり、それが離職につながる。そして残された人はもっと生産能力を限界まで引き出そうとされる。悪循環である。トム・デマルコは「人はすぐに交換可能な資源でない」とはっきり述べている。人は、時間を重ね、その環境で人との繋がりを作り相互に刺激しながら成長していくものであり、個人の能力だけで測れない部分が多い。トム・デマルコの、そのような思いがつまった一冊でした。