組織傾向の概念化は大事 ~アドレナリン・ジャンキー~

良し悪しは別として、医療組織って独特だと思っている。多くの専門職が、それぞれの職域や得意分野、考え方に違いがある中でチームと連携し、一人の患者さんの治療にあたる。しかし、組織的には専門職同士のつながりが強く、縦割り組織と横断的チームが複雑に絡み合う。そして、患者さんの治療や思いを優先する場合は、時として組織のルールを破ることもいとわない。いい部分でもあるが、組織としての機能不全に陥るリスクも高い。そんな組織傾向を概念化するための、いい本を見つけました。

アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン

アドレナリンジャンキー プロジェクトの現在と未来を映す86パターン

IT業界と医療業界は、違うようで似ている部分がある。直接の対象がコンピュータか人かは大きく違うが、多様な専門家がおり、チームで行う高度な知的作業、という意味では共通している部分も多いと考えている。

一時期、アップルのスティーブ・ジョブスが経営者としてもてはやされたが、個人的には、IBMを倒産寸前だった所から甦らせた、ルイス・V・ガースナーのほうが大いに参考となる。彼の著書を見ると、専門職が組織としていかに扱いにくいか、組織としてのマクロな視点を持っていないかが良く分かる。

巨象も踊る

巨象も踊る

そしてIT業界のコンサルタントであったトム・デマルコが書いた「ピープルウェア」は、技術でなく、人と組織に焦点を当て、実情やどうあるべきかをおもしろおかしく紹介しており、読んだ当時は衝撃を受けました。

ピープルウエア 第3版

ピープルウエア 第3版

そのトム・デマルコの書いた最近の著書「アドレナリン・ジャンキー」は、いい組織も悪い組織も併せ、IT業界の組織傾向をうまくパターン化し、ユーモアあふれるネーミングをして紹介している。笑っちゃう部分もあるが、自分の組織にあてはまる部分は笑えなかったりする。

組織パターン化の概念化はなかなか難しく、何となく「こんな組織」って分かってても、言語化できなければ位置づけや共有化しにくい。本書に紹介された86のパターンから、自分の組織傾向に似たパターンを見つけ、ネーミングを共有するだけでも位置づけが分かり、悪い部分、良い部分が見えやすいのではないでしょうか。