「やって見せ、~」をもうちょっと詳しく ~インストラクショナル デザイン~

「やって見せ、言って聞かせてさせてみて、誉めてやらねば人は動かじ」
有名な山本五十六の言葉です。臨床実習で指導する場合の、基本的な考え方として引用されることが多く、分かりやすいですが、見せる前にどんな説明をするのかなど、指導する場合には手がかりとしての不十分さがあります。そこで、もう少し踏み込んで分かりやすく書かれたのが本書です。この中で17の鉄則が書かれていますが、「標的行動を見せてやらせて確認させる」というのは、このうちの1つに過ぎません。

インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック

インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック

本書では、「インストラクション」を、何か教えることと説明はしているが、それよりも意味あいの幅の広く、そのままの言葉で利用している。その言葉を、「何らかの行動を引き出すための仕掛け」と定義し、そのデザイン(設計)ルールが書かれているのが本書である。その中に書かれている、17の鉄則を引用する。

  1. 何を教えるのかをはっきりさせる
  2. 学びにコミットする
  3. 教える理由をはっきりさせる
  4. 成功の基準をはっきりさせる
  5. 標的行動を見せてやらせて確認させる
  6. 意味ある行動を引き出す
  7. 引き出した行動はすぐに強化する
  8. 正答を教える
  9. 誤答を教える
  10. スペックを明記する
  11. 学び手を知る
  12. 学び手は常に正しい
  13. 教え手を知る
  14. 学ばせて、楽しませる
  15. 個人差に配慮する
  16. 「分かりました」で安心しない
  17. 改善に役立つ評価をする

まず、心構えとして「学びにコミットする」ことを挙げている。これは教える=学ぶでなく、あくまでも学習者の学びに対して責任を持つ姿勢を持つ、ということだろう。

そして、見せたりやらせる前後に何を伝えるかについても、多く書かれている。教える理由や成功の基準、正答、誤答などがそれに当たるが、教える前に教育者が、その部分をはっきりさせ言語化しておくことが必要で、そこが本書を読むことではっきりしてくる。

教えた後の行動については、「ほめる」ことも大事ではあるが、それは結局「行動を強化する」ための関わりの一つであり、意味ある行動を引きだせていることが前提である。また、学び手によっては強化方法を変えたほうがいいこともあり、習慣化のための関わりは学習者の個人差に合わせることも多いように感じる。

本書は全体的に平易な文章で分かりやすく、かつ文字数も最小限ですぐに読み切ることができる。基本としては山本五十六の言葉でもいいが、それを補足するものとしてはいい本でしょう。