衝撃の一冊 ~長生きできる町~

今まで、自分の考え方に大きな影響を与えてくれた本は何冊かありますが、その中に加わることになる、衝撃的な本でした。健康寿命に影響を与えていることが、ビックデータからいろいろ分かり、それが私たちの直観とは違うことも多く、データから考えることの重要性を改めて感じました。同時に、作業療法士は、目の前の対象者に向き合うことが大切と思っていますが、それと同じくらい、「今の関わりが、この方の長期的な健康にどの程度寄与できているのか」というマクロな視点も必要なことを、今回感じました。

長生きできる町 (角川新書)

長生きできる町 (角川新書)

著者の近藤克則先生は、リハ医だった時期もありますが、現在は予防医学が専門とのこと。第20回兵庫県総合リハビリテーション・ケア研究大会での特別講演を聴講させていただき、早速本書を購入して読破しました。

本書は、ほぼ講義された内容が、分かりやすくまとめて書かれています。簡単に言うと、健康寿命認知症リスクは、町の環境でかなり変わるというもの。その要因を分析し、どのような町づくりを行っていけばいいのか、方向性を示したものです。

過去に、健康教室や、講義型の認知症予防・転倒予防教室を行ってきたが、あまり効果がなかったこと。以外にも、いなかよりも街中のほうが健康を保つにはいい環境だった、ことなどがデータから分かりやすく示されている。ビックデータの分析により、改めて分かったことも多かったようです。

予防や健康維持のためには、知識よりも自主性が重要だということ。そしてそのためには、個別のアプローチよりも環境づくりがポイントになる。リハビリテーションは基本、個別での介入だが、マクロな視点、長期的な視点から見ると、それが最も良い方法なのかは自分でもよく分からない。病院でのリハビリは、退院して役に立たないとの意見も聞かれるが、本当に個別のリハビリテーションに意味があるのか、一度改めて考え直す時期に来ているように思う。