生きるための知識・知恵、そして教育を考えらせられる ~国を救った数学少女~

久しぶりの文学小説でしたが、展開が面白く一気に読みきりました。ありえないくらいの過酷な環境の中、主人公のノンベコは自分の力で状況を切り開いていく。物語としてもかなり面白いんですが、教育がない環境でも自分から学び、それを状況打開のために利用する様を見ていると、読み書き計算などがいかに人生にとって大事なものか、改めて考えさせられました。子どもにも読んで欲しい本です。

国を救った数学少女

国を救った数学少女

主人公のノンベコは、人種差別があった頃の南アフリカで、し尿処理場で汲み取りを行い日々の暮らしを営んでいた。日本で考えると非現実的ですが、「実際にあったんだろうな」と思わせるくらいのぎりぎりの設定。物語の展開も本当はあり得ないくらいめちゃくちゃですが、「もしかしたら、あるのかも」と思うくらいの微妙な現実感。ただ、この環境で生まれたら、一生をここで過ごすんだろうな、と感じることはできた。もちろん教育などなく、子どもの頃から働かされ、その延長で働き続け一生を終える。

しかしノンペコは違った。自分でいろんなことを知りたいと思い、言葉を知っている人に教えてくれるよう頼み、本のある場所に行き読み、とにかく知ることに貪欲だった。そして突出していた計算能力を使い、汲み取り作業を効率化するなど、それを自分が生きるために必要な、問題解決をするためのツールとしてうまく活用していた。彼女はいつでも絶妙な方法で切り開いていくのだが、そこはコメディ。次から次へと予想もしない問題が起こっていく。なぜか世の中にあってはいけない原子爆弾を手に入れてしまうことになり、最後はスウェーデン国王まで巻き込む大騒動に。

後半は激しい展開でハチャメチャ感たっぷりでしたが、個人的に興味深かったのは、南アフリカを出るまでの前半です。彼女の仕事の上司はいつも、一応の社会的肩書きはあったが無知で、現状の問題には目を向けず、ひたすら現状維持を願っている。その中でこっそりとノンベコが問題を解決していくのだが、それに上司はあぐらをかいてしまい、やはり自分からは何かをしようとはしない。どの上司も、大きく状況が変われば何もできず、最後は不幸なことになるのですが、変化に対応できないことがいかに滑稽なことか、そして知識があるだけでなく、それを活用し、知恵を絞り問題解決していくことが、以下に大事か。そしてどんな環境でも知識と知恵があれば、打開できる可能性があることを、ノンペコの生き方を通して教えられた気がします。