タイトルに不満あり ~ビジネスパーソンのための契約の教科書~

昨日は娘とその友達連れてプールに行ってきました。お父さんは荷物番していたのでプールには入らず、その間に本書を読破しました。この本、具体例は少ないものの、書いている内容の大枠は前回紹介したビジネス契約書の起案・検討のしかたとさほど変わらない。しかし、前半の導入部分に書かれた事例提示が絶妙である。これ読むと、「ああ、自分も無関係じゃないな」って思ってしまう。とっつきにくい内容だけに、本書の半分近く使った導入部分は、一読の価値ありです。そしてタイトルへの不満ですが、本書は「ビジネスパーソンのための」ではなく、「日本人のための」でもいんじゃない?

ビジネスパーソンのための契約の教科書 (文春新書 834)

ビジネスパーソンのための契約の教科書 (文春新書 834)


インターネットが普及し、様々なサービスが提供される中、ネットで「同意します」って押すことは誰でも増えてると思います。でも、その同意内容は読まないことが多い。少し前に学会・士会運営にベターなオンラインストレージは?Google Drive利用規約を読みましたが、アップした時点でGoogleに使用ライセンスを付与したことになる条文が入っていた。これだけでなく、ネットサービスの利用規約には意外と危ない条文が含まれており、知らずに同意したらえらいことになる。例えばYouTubeでは、アップしたらYoutube側が利用の権利を得るが、Youtube側が利用したことにより訴訟が起こったら、それはアップした者が責任を持つ。なんて無茶な条文も入っている。

そんな身近でほっとけない事例を紹介しながら、条文を読まないことや安易に同意するこの危険さ、日本と海外の契約に関する意識の差に触れている。日本は契約の時は相手の人柄を見るが、海外は条文を見るんですね。そこを分かってないと、後から行き違いが生まれてしまう。「自分は関係ない」と思っている人も、TwitterFacebookなど、利用しているネットサービスの多くは海外のものなんだから、無関係ではない。

本書は後半になって初めて、「契約とは何か」という項目が出てくる。前半を読んで「これは知ってないとえらいことだぞ」って読者の心をつかまないと、こんなめんどくさい内容は読んでくれないだろう。後半の内容は淡々としながらも、「なぜ甲乙ってつけるの」「契約を破るとどうなるの」など、素朴な疑問を中心に書かれているので、楽しく読み進めることができる。

本書を読み終えて、たしかにビジネスパーソンには良書ですが、もっと範囲を広げて、日本人のための教科書にしてもいいくらいの本です。内容はもちろんですが、興味のない人でも読み進められるような工夫がされているので、最初の一冊としてはお勧めです。ただし、その分浅い内容ですので、興味を持ったらもう少し詳しい本を読んだ方がいいでしょう。