今だからこそ、知っておきたい方法 ~フィードバック入門~

今年の一冊目は、いきなり良書に巡り合えた。フィードバックという方法を何となしに使っていたが、本書もしくは著者の本に、もっと早く出会っておきたかったと後悔するほどの内容でした。これは一般企業の現場教育を想定した本であるが、臨床実習教育の、そして臨床教育の泥臭い問題を放っておかず、しっかり向き合えるための手がかりに十分なり得ると考える。しかし、フィードバックする側にもそれなりの力量が必要なことは、覚悟しないといけない。

作業療法臨床実習の手引きには、指導方法としてティーチングとコーチングという、2つの方法の使い分けが強調されている。たしかに、認知領域、精神運動領域だけであれば、この2つをうまく活用すればいいかもしれない。しかし、臨床実習で指導が行き詰る多くは、情意領域の問題だと思っている。使うタイミングを考え、最小にはとどめたいと思うが、耳の痛いことを伝える、フィードバックも必要かと思っている。

本書でのフィードバックは簡単に書くと、部下のパフォーマンス等の問題に対し、本人に伝え向き合ってもらい、そして今後の行動改善の支援をするまでの、一連の関わりのことである。耳の痛いことをどう伝え、行動を変えてもらうための方法論と言える。しかし、基本は1 on 1、つまり1対1であり、パワハラに神経質になっている現状では難しい環境設定でもある。

例え本人に耳の痛いことを伝えても、「そうですね」と素直に受け入れられないのが当たり前と言っているのを見ると、著者は現場感覚も十分あるようだ。では逆ギレしたり言い訳する相手に対し、どう対応するかについては、冷静に、相手の話を聞き、矛盾している所を論破するしかないと書いている。指導する側にとっても力量が試される方法である。逆に、相手に論破されることも十分あり得る。フィードバックするためには、普段から「なぜ、それを行う必要があるのか」と一つ一つに対して意味を考え、論理的に考えるトレーニングを積んでおかなければ使いこなすのは難しそうである。

もちろん、耳の痛いことを言って、嫌われたり関係が悪くなることも十分考えらるので、諸刃の剣でもある。臨床実習で使う時は、主に担当している実習指導者でなく、実習指導の責任者であり部署の上司が行ったほうが良さそう。痛いことを言う役目と、直接指導する役目は分けた方が無難だと思う。