池田先生の知性と寛容が詰まった一冊 ~真面目に生きると損をする~

リーディンググラス(つまり、老眼鏡)のおかげで字を読むストレスが減り、ここ最近、読書スピードが格段に上がった。図書館で借りたこの本ですが、あまりに面白かったので、1日で読み切っちゃいました。何事にも流されずに知性あるものの見方を貫く一方、違うものや考えに対しての寛容さも併せもっているのが池田先生。「ホンマでっか!?TV」での面白おかしいコメントの数々は、知性と寛容さから出てくるのでしょう。

この本は、池田先生のメールマガジン池田清彦のやせ我慢日記」の記事を再構成、加筆、編集されたものです。最初の章はタイトル通り、人の生きる意味を生物学者の視点で解き明かされている。といっても、「人生に、生きる意味なんてない。だから今日を楽しく行きましょう」と、バッサリ。ただし、その説明には納得できることが多い。特に健康に対する考え方は全く同意できる。健康に気を使いすぎると、かえって不健康になる。これも、どこかの国で比較研究されていて、健康に気を使って生活している人のほうが、寿命が短いなんて結果が出ていたような気がする。北欧圏の論文だったと思うけど、残念ながら見つからない。

第2章、第3章は、知性の目を通して教育や資本主義・政治をどう見て、とらえるのかが、分かりやすく書かれている。内田樹さんの「日本の反知性主義」という本がありますが、現在の政治・政策の迷走には、国民の反知性化が大きく関わっていると思う。池田先生の見方が全てではないですが、多数の意見や雰囲気、表面的な部分に流されることなく、自分でその本質を捉えようとする姿勢が、みんなに必要なんじゃないだろうか。知性をおもしろおかしく気付かせてくれる本としては、楽しみながら読めるこの本は、お勧めです。

第4章は、寛容さに関すること。要するに「異質な他者は、理解できないけど、それでいいんじゃない」という姿勢が大事。これだけ論理的に考える池田先生だが、テレビの中で、感覚的に反論されたり、理不尽に否定されても、笑っていられるのは、寛容さがあってのことだろう。この知性と寛容のバランスがうまく取れているのが池田先生だろうと思います。もっとも、知性があるからこそ、寛容になれるんでしょうね。